この、イェルク・デームスがオリジナル古楽器を弾いて、古楽器オケであるコレギウム・アウレウムを弾き振りした、モーツァルトのピアノコンチェルトのアルバムは、その珍しさに惹かれて購入した。デームスといえば、シューマンの全ピアノ曲をモダンピアノで弾いた全集が有名だが、モーツァルトの古楽器演奏はどんなものだろうという興味が湧いた。コレギウム・アウレウムは、純粋な古楽器使用ではないようだが、聴いている限り、ちゃんと古楽器の音がしている。
ここでのモーツァルトのピアノコンチェルトの第12番K414と第27番K595は、1975年4月7日に行われた音楽祭での演奏だということが、ジャケットに貼られたシールに書いてあった。古楽器演奏が今のように隆盛になる以前のことである。さて、肝心の演奏である。12番はウィーンでのモーツァルト最初のピアノ協奏曲であるが、その初々しさのようなものが良く表現されている。デームスのフォルテピアノは繊細かつ優美である。弾き振りであるが、オケは単なる伴奏にはなっていない。弦と管のバランスが絶妙である。とにかく聴いていて楽しい。フォルテピアノとオケが深い対話をしている。変わって27番。このウィーン最後のピアノ協奏曲の演奏にも、基本的に12番と同じ事が言えるが、こちらの方がより凛とした感じがある。それは曲の違いによるだろう。何か深い静けさのようなものが漂っている。フォルテピアノとオケの絡み合いはウィーン初期よりも緊密になっているが、デームスはそのあたりを良く表現している。聴いていて身が引き締まる思いだ。
このアルバムの録音は極めて優秀。余計な味付けをせずに、古楽器演奏の質素な美しさを見事に捉えている。臨場感も十分。
2曲の演奏とも、聴いていて楽しいと同時に、どこか悲しい。シューベルトの「モーツァルトの音楽は悲しい」という言葉にぴったりの感じがする。デームスという音楽家の底力のようなものが良く分かる名演奏である。ハルモニア・ムンディも、昔からこんな名盤を出していたのだなと感心した。2年ほど前に買った愛聴盤のひとつである。大事にしたいと思っている。
ゲザ・アンダは、デビューして当初はロマン派の名手として知られていたということは、知識としては知っていたが、実際に彼のロマン派の録音は不勉強ながら聴いたことがなかった。2年ほど前にこのLPを購入して、遅まきながら勉強している。村上春樹氏はそのクラシックに関する著書の中で、アンダには“中庸の良さ”があると言っておられるが、その通りだと思う。前奏曲集に関しては、コルトーやアルゲリッチに較べると、抑制された演奏。すっきりとした味わいがあり、ロマン派というよりは、古典派とのつながりが作曲家にあることを感じさせる。ショパンは「自分はロマン派ではない」と言っていたそうである。アンダの演奏は、高貴とまでは言えないかも知れないが、この人にしかない上品さというものがある。1曲ごとの違いを強調するというよりも、24曲全体の流れを重視していると思われる。テクニックがあるが、それを誇示しない態度に好感が持てる。全体として、おだやかな美しさに満ちて、何度も聴きたくなる。英雄ポロネーズは、歯切れが良く、元気のある演奏だが、やはり上品さは失われていない。聴いていて楽しい。このLPは、パリのグランプリ・ドゥ・ディスクを受賞した名盤ということである。当然かなと思う。DGGのステレオ録音も優秀で、アンダのピアノの音色が美しい。これからも愛聴していく所存である。
このレコードの事は不勉強で全く知らなかった。ヨッフムのモーツァルトのオペラという事が新鮮に感じられたので、少し冒険するつもりで(迷いながら)購入した。キャスティングは、フィオルディリージがイルムガルト・ぜーフリート、ドラベッラがナン・メリマン、グリエルモがヘルマン・プライ、フェッランドがエルンスト・ヘフリガー、デスピーナがエリカ・ケート、ドン・アルフォンソがディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウである。豪華キャストと言って良いだろう。ヨッフムの指揮は、予想したよりも遥かに躍動感にあふれ、ぐいぐいと音楽を進めていく。なおかつ優美さにも欠けていない。モーツアルトのオペラ演奏としては、文句のつけようがない。歌手たちは、イタリアの歌手に較べてドイツの歌手はそうだと思うが、いたずらに自己主張をすることなく、指揮者のいう事を良く聞いて歌っている。全般的に優等生的な演奏という事が出来るだろう。DGGの独最初期盤ということであるが、優秀なステレオ録音である。音がヴィヴィッドで、演奏の躍動感を引き立てている。ちなみにこのレコード、1面の裏が6面、2面の裏が5面、3面の裏が4面となっている。こういうのは、昔のオペラのレコードなどには良くあったようだ。2年ほど前に購入して、今までに2回ぶっ通しで聴いたが、2回とも非常に楽しめた。本当はもっと頻繁に聴きたいのであるが、いかんせんオペラの全曲盤となると、少々聴くのがおっくうな気持ちになってしまう。その点反省している。ともあれ、これはこれからも何度も聴きたいレコードであることは確かだ。大事に持っていたいと思う。
カイルベルト&バンベルク交響楽団によるモーツァルト。知る人は知っている名盤なのかも知れないが、私にとっては掘り出し物であった。私にとってのカイルベルトは、テスタメントから出ている「ニーベルングの指環」のCDでの、白熱した名演を成し遂げた指揮者という印象が強いが、このモーツァルトの40番と「ジュピター」も非常な名演であると思う。何というか、古武士の風格とでも言ったら良いか、質実剛健かつ気品のある演奏なのである。一聴した印象は、「優美さのないモーツァルトだなあ」というものだったが、これが良いのだ。なぜか知らぬが繰り返し聴く愛聴盤となってしまった。カイルベルトは、曲の構造を良く分析して、立体的に演奏を組み立てている。バンベルク交響楽団も、抑えめであるが確かな気迫を持って指揮者について行っている。結果、この個性的な名演が誕生したということであろう。とにかく他にはない演奏だ。
TELEFUNKENのモノラル録音も明晰さを持った優秀さ。聴いていて飽きの来ない音である。2年ほど前に購入して以来、良く聴いている。現在ではあまり話題に上らないようだが、確かな名盤である。
エジプトでのライブ。名高い名盤ということであるが、恥ずかしながら未聴であった。2019年にDGGから出たCDボックスである「COMPLETE RECORDINGS ON DEUTSCHE GRAMMOPHON AND DECCA」には、同じエジプトライブが収録されているが、それは1951年4月25日のアレクサンドリア。このLPの方は、2日前の1951年4月23日のカイロであって、二つは別の演奏だ。このカイロでの演奏は、CDボックスには収録されておらず、そういう意味で、このLPは貴重である。基本的な音作りはアレクサンドリアとカイロで大差ないが、カイロの方が白熱の度合いが若干高いように思われる。聴いていて、非常に惹き込まれるものがある。フルトヴェングラーのブルックナーはドラマティックであり、それには賛否両論あるが、私は賛の方である。ベルリンフィルの音は厳格かつ厳粛である。ウィーンフィルの明るさに較べて、ある種の暗さがあると思う。私はウィーンもベルリンも同じように好きである。LPは独DGGの“HISTORISCH”という再発廉価盤だが、このシリーズ、音を若干いじっているのではないかと思われる。私は特にオリジナル盤ということにこだわらない者なので、特に気にせずに楽しめる。かれこれ2年程前に購入して以来、時々聴いているが、飽きの来ない名盤である。こんな良いレコードを売ってくれたお店に感謝。
かれこれ2年程前に購入。恥ずかしながら45歳を過ぎても未聴であった。購入以来、今日まで事あるごとに聴いているが、これは真の名盤であった。それもちょっと信じられない程の。クナッパーツブッシュは、頑固にインテンポを守りながら、淡々と音楽を進めていくが、そこにはうまく言葉では表現できない深みがあり、ブルックナーの神髄を見事に捉えている。ウィーンフィルの音色も温かみがあって良い。このオケは、指揮者の言うことをあまり聞かず、自分達のやりたいようにやるオケだという噂があるが、フルトヴェングラーやクナッパーツブッシュ級の指揮者の言うことには素直に従ったと思われる。結果、歴史的な名盤を生んでいる。これもその一つだ。独DECCAのわりと初期のころのLPだと思うが、音が非常に良い。良心的なエンジニアの仕事ぶりだ。このLPはベーレンプラッテで購入した初めてのレコード2枚のうちの1枚である。非常に良い出会いが出来たと思う。感謝。
なるほど、ダイレクトカットとはこう言うものか。音楽的には面白くも何でもない。もう少し音楽的な内容でダイレクトカットのLPを聞いてみたかった。ダイレクトカットの名前だけで購入してはいけない代表的なLPではないだろうか。
1975頃NHKFMでパガニーニ変奏曲をベリンフィルとの演奏で聴いたのがよかったので購入。全曲盤の未開封盤があったのには驚きだが、海外盤のボックスに時々あるクッションのスポンジがかろうじて原型をとどめながらも粉々になったのがレコード盤全面に散乱しており、エアーダスターと粘着型クリーナー、最後にバキュームクリーナーで慎重に取り除き、針を落とすのは少々ためらわれたので、非接触のELPで再生したが、70年代前半ながらもフィリップスの解像度の高いみずみずしい録音を楽しめました。
ベートーヴェン がヴィーンで有名になるキッカケとなった作品。しかし、ベートーヴェン は「あの作品20の作曲家ですね」と言われるコトに不快感を持ったと言われる。ヴィーンフィルのメンバーを中心とした演奏で、流石にヴィーンらしい「田舎臭さが」出ている演奏である。LPでは,他にヴィーン室内アンサンブル「DG 2530 799」がある。甲乙つけがたい「ヴィーン臭さの演奏である。
普通のLPセットは1枚目表面、裏面、2枚目表面、裏面と順に聴いていくのが普通だが、このセットは1枚目表面、2枚目表面、3枚目表面と続いて5枚目表面、裏面、4枚目裏面、と戻っていく。こんなのは初めてだ!他にも例があるのかしりたいです。