高名なチェンバロ奏者であるワンダ・ランドフスカ女史。モダン・チェンバロの開発指導者でもある。気になる存在でありながら、不勉強で聴いたことがなかった。2年ほど前にこのお店でこのアルバムを見つけ、勉強のためにと購入して聴いている。独ELECTROLAの復刻再発盤Dacapoシリーズの一枚で、A面にはハイドンのクラヴィーア協奏曲第11番が、B面にはモーツァルトのピアノ協奏曲第26番「戴冠式」が収録されている。女史はハイドンではモダン・チェンバロを、モーツァルトではモダン・ピアノを弾いている。ハイドンの指揮はユージェーヌ・ビゴー、モーツァルトの指揮はワルター・ゲールである。オーケストラはともに未詳。
ハイドンは、チェンバロが繊細かつ歯切れが良い。ここぞという所での力強さもある。チェンバロも上品だが、オケも上品である。両者の絡み合いが見事である。ハイドンのこの曲はこんなに深かったのかと気づかせてくれる演奏である。
モーツァルトは、ピアノがロココでギャラントである。弾き方がなめらかで、音がビロードのように美しい。時代様式と深い感情移入を両立させている。オケも優美かつ深みを持ってピアノと対話する。感動的な演奏である。
録音はSP時代の音だが、DacapoシリーズのLP化で良い音になっている。ノイズが軽減されており、問題なく聴ける。SPはSPで良い音だったのだろうが。
とにかく、聴いていて楽しく、勉強になる一枚である。出会えて良かったし、安く購入できて良かった。これからも大事に愛聴したい。