新LP鑑定法 2ページ目

新LP鑑定法

● ドイツ・グラモフォン(DGG)編

● イギリスDECCA編

● Columbia&EMI編


◆ドイツ・グラモフォン(DGG)編◆

モノラル時代

モノラル時代のDGGのセンターレーベルのデザインは、大きく分けて二つに分けられる。「LP33」と「チューリップ」である。

ALP33レーベル

LPのごく初期、つまりLPレコードとSPレコードが同時発売されていた頃のレーベルと思われる。
センターレーベルの中心部に金色で「LP33」と印刷されているレーベルだ。(写真1)

(写真1)

たぶん、SP用の機器でLPレコードを再生してしまって、LPの音溝を台無しにしてしまうことを防ぐために、「このレコードは、LPである!」ということを強調し、注意を喚起するためのものと思われる。このレーベルは、LP登場直後ものに限定されているため、非常に珍しい。(また、ジャケット装丁もほとんどが、丁寧に糸で縫われたものである。)

Bチューリップレーベル

1950年代中盤にあった「LP33レーベル」も、50年代も終盤になると、LPの普及に伴い廃止され、クラシックファンにお馴染みの「チューリップレーベル」(Tレーベル)になってくる。(写真2)

(写真2)

モノラル時代のTレーベルは、大きく分けて、二つのタイプに分けられる。

その見分け方は、レーベル中心部のセンタースピンドル右にある「33」の数字の周囲が、四角形であるか、逆三角形であるかで判別する。(写真3と4)


(写真3)


(写真4)

プレス時期としては、33の周囲が四角の方が初期のようである。

この両者の違いは、私にはまだちょっとわからない。(EMTの930や927のイコライザーカーブの切り替えスイッチには、これと同じマークのポジションがあるが、不勉強ものの私には不明。わかる人がおりましたら、ご一報を!)

なお、あまり知られてはいないが、DGGの1960年代中盤までのステレオ録音には、モノラルカッティングのLPが存在する。これらを聴くと、ステレオ盤にはない、分厚い音像から新たな発見をすることがある。もし、機会があったら、ぜひともトライしてほしい。

ステレオ時代

ステレオ時代のレーベル遍歴もかなり複雑だ。
ステレオ期のセンターレーベルのデザインは大別して大きく2つに分けられる。チューリップレーベル(写真5)とブルーラインベーベル(写真6)である。

(写真5)

モノラル期からあるTレーベルは、レーベルの外周部が白と青のチューリッで囲まれたもの、BLレーベルとは、チューリップの代わりに青の二重線が印刷されたものである。

(写真6)

チューリップレーベル

TレーベルのステレオLPはさらに2つのグループに分けられる。一番古いのは、レーベル外周のチューリップの内側の「著作権に関する注意」がALLEHERSTELLERから始まるドイツ語の文章になっている。(写真7)

(写真7)

もうすこし後の盤では、そこがMADEINGERMANYから始まっている。(写真8)

(写真8)

ジャケットを見てみると、TLレーベルの古い盤(ALLE)のほとんどは表面上部のDG独特の黄色い部分(額縁)の下部の「STEREO」の部分が赤く塗りつぶされている。これを、マニアは「赤ステレオ」と呼んでいる。
また、DECCAなど同じように、1960年代の中ごろまでは、ジャケット裏の右下の部分にジャケットの印刷年月が小さく印刷されている。
さて、この新旧のTレーベルのプレス時期の件であるが、かなり状況は複雑だ。
レコード番号でいえば、138で始まる6桁のLPには、すべて写真7のような古いレーベルが存在するが、139で始まる後の時期のリリースのものでは、写真8の後期のレーベルしかないものもある。(それどころか、このあと紹介する、BLレーベルのみしか見かけないものも存在する。)

このあたりは、公式な見解がなくすべて経験則なのでそのつもりで見てほしい。 また、ジャケットについても前述の「赤ステレオ」ジャケットに入っているLPのすべてが古いプレスとは限らないので、マニアは要注意だ。

ブルーラインレーベル

1968年頃からプレスされたLPはすべてこのレーベルデザインとなる。(番号でいえば、139始まる6桁のLP、2530や2531で始まる7桁のもののすべて。写真6)

(写真6)

この頃のLPはカラヤン始め、ドイツやオーストリアを中心とする巨匠たちの名演・名録音揃いなので、オーディアファイルであれば、数枚いや数十枚単位のコレクションをお持ちの方も追いに違いない。

実は、このBLレーベルも、小さな違いに注意すると数種類のタイプ分けることができるが、今回は省略。

やがて、時代はデジタル録音の時代になってくる。DGGも基本的にはBLレーベルのデザインを踏襲するが、そのなかに「DEGITALRECORDING」のロゴを加えた図案を採用してくる。(レコード番号でいえば、2532で始まる7桁、あるいは、4から始まる6桁。ちなみに、4から始まる6桁番号のあとのハイフンの後の数字は、メディアの種類を表している。1はLP、2はCD、4はカセット。)


◆英DECCA編◆

モノラル時代

イギリスの名門レーベルDECCA社では,モノラルLPは1950年から1969年まで生産された。これ以降はステレオLPのみのプレスとなっている。
DECCAのモノラル期のレーベルは,大きく分けて2つのパターンに分けられる。
それぞれは,「オレンジ&ゴールド」と「オレンジ&シルバー」と呼ばれている。

Aオレンジ&ゴールドレーベル

レコード番号で言うと,すべてのLXT2000番台とLXT5118までの5000番台となる。そのアルバムのセンターレーベルがオレンジ色に金文字が印刷されていれば,それがオリジナル盤である。いわゆる「オレンジ&ゴールドレーベル」だ。(写真1)

(写真1)

このレーベルのほとんどのLPはオリジナルのモノラル録音である。父クライバー,クナッパーツブッシュ,そしてフルトヴェングラーらの名演が目白押しだ。録音も素晴らしく,特に楽友協会でのウィーン・フィルの名盤は,今聴いても,決して輝きを失うことはない。

Bオレンジ&シルバーレーベル

LXT5119以降のレコードは,すべて銀色の文字になる。これが,「オレンジ&シルバーレーベル」である。
この時期のLPには,ステレオ録音のモノラルカッティングも多いが,これを侮ることなかれ。ステレオ録音であっても,モノラル再生用にマスタリングされた名盤は,ステレオとはまた違った魅力を放っている。(写真2)

(写真2)

なお,このモノラル時期のLPのレーベルは細かく見ると,デザイン違いのほかに,レーベルの内側や外側に溝があるものがあり,そのパターンも数種ある。これを,プレス時期によって細分した資料も見かける。しかし私には,確証がもてない部分も多く,今後も検証が必要であるので,今回は紹介を見送ることにする。

ステレオ時代

DECCAのステレオLPのセンターレーベルのデザインは,年代別に4つのグループに分けることができる。それぞれをオーディオファイルはED1,ED2,ED3,ED4と呼んでいる。また,それら中でも,ED1からED3までを「ラージ・レーベル」(またはワイド・バンド・写真3),ED4を「スモール・レーベル」(写真4)と大別している。

(写真3)

(写真4)

ラージ・レーベルは,読んでその字のごとく,スモール・レーベルよりもセンターレーベルの大きさが,ひとまわり大きい。また,レーベル中にデザインされている銀色の帯(黒色で「FULLFREQUENCY」と書かれている)の幅が13ミリメートルあり,ED4よりかなり広い。そのため,「ワイド・バンド」とも呼ばれている。

それで済めば,話は簡単であるが,そうは問屋が卸さないのだ。実は,「ラージ・レーベル」だけでも,3種のヴァリエーションが存在する。

もっとも古いタイプがED1と呼ばれるタイプだ。ラージ・レーベルの外周から約1センチのところに溝(GROOVE)があり,レーベル外周(時計でいうと10時の辺り)に「ORGINALRECORDINGBYDECCA」と印刷されている。(写真5)

(写真5)

このレーベルが,DECCAのステレオレコードの中でも,もっともプレスの時期が早く,オーディオファイルたちの憧れの的である。(このED1より前に,ごく少数ではあるが,レーベルデザインはED1と全く同じで,レーベルの外側の溝が糸のように細いものがある,これをED0,または「パンケーキレーベル」と呼ぶ。)

続くED2はレーベルデザインについてはED1とほとんど同じであるが,10時の位置が「MADEINENGLAND」(写真6)となっている。

(写真6)

ED3はED2 におけるセンターレーベル外周部の溝のないものだ。(写真7)

(写真7)

DECCAのステレオLPでは,ED1またはED2が存在するレコードは
SXL2000番台すべて
SXL6001から6368

またED3は,
SXL6369から6448まで存在する。(ただし,SXL6435と6447はED4がオリジナル)

それ以降の番号はED4がオリジナルである。

また,デジタル録音のレーベルや、1980年代後半に閉鎖されたイギリスの工場の代わりとしてDECCAのLPがプレスされたオランダ工場でのレーベルも参考までに掲載しておく。(写真8、9)

(写真8)

(写真9)

◆Columbia&EMI編◆

英コロムビア

コロムビア(Columbia)社のレコードで、最もオーディオファイルに人気があるのは、オットー・クレンペラーやアンドレ・クリュイタンス、ダヴィッド・オイストラフそしてレオニード・コーガンなどの名録音で非常に有名な、SAX(サックス)シリーズである。特に、スカイブルーの地にシルバーで文字が印刷され、格子模様が全体に入り、ラベルの全周を広い帯で囲んでいる「ブルー&シルバーレーベル(写真1)」は名盤のオンパレードである。

(写真1)

SAX2252から2539(ただし2526、2532から2534、2537の5枚は除く)までは、このレーベルデザインがオリジナルである。

そして先程の5枚とSAX2540以降のオリジナルレーベルデザインは、「ハーフ・ムーン(あるいはセミサークル)」と呼ばれるものである(写真2)。このデザインは、後述のEMI(HMV)のレイアウトに似ているが、レーベルのどこかに「Columbia」の文字が入っているため、簡単に見分けが付く。

(写真2)

後期のレーベルは、EMIの「スタンプニッパー」とほぼ同じであるが、ニッパー犬の代わりに音符が印刷されている。(写真3)

(写真3)

このレーベルの音質上の特色は、デッカの鮮烈なサウンドに比べ、聴く者を包み込むような音場感豊かな上品なサウンドといってよい。

英EMI(HMV)

蓄音機のラッパに耳を傾け、熱心に(?)音楽鑑賞をしている名犬「ニッパー」君で有名なEMI(HMV)にも、多くのセンターレーベルのヴァリエーションが存在する。
最も初期のレーベルは、白地に円形のラベルで蓄音機とニッパー君をあしらい、その下にスピンドル孔を横切る「STEREOPHONIC」の文字があり、金色で縁取りがされているデザインである。これを、私たちは、「ホワイト&ゴールド・ニッパー」と呼ぶ(写真4)。レコード番号で言えば、ASD251から575まであたりのLPはこのレーベルが、オリジナルである。

(写真4)

これ以降は、基本的には、赤の地に上半分の半円の中に蓄音機とニッパー君の絵が入り、半円の上部は「HISMASTER’SVOICE」のロゴが印刷されたデザインになる。これを、「半円(セミサークル)ニッパー」と呼ぶ(写真5)。番号では、ASDの576あたりから2470までは、オリジナルであると考えられている。

(写真5)

今まで紹介した、DECCAやColumbiaも名演・名録音のオンパレードであったが、HMVもそれに勝るとも劣らない名盤がカタログを埋め尽くしている。中でも、シューリヒトのブルックナー、ケンペとバルビローリの一連の録音、そして、デュ・プレの名盤は、オーディオファイル・音楽ファンの憧れの的である。

特にASD429のモーツァルトとバッハのヴァイオリン協奏曲集(ジョコンダ・デ・ヴィートのヴァイオリン、ラファエル・クーベリックの指揮)はもしかしたら、クラシック音楽のすべてのLPの中でも、もっとも入手の難しいLPのひとつかもしれない。(事実、私は、このLPについては、いまだかつて見たことも、聞いたこともないのだ。)
これ以降は、スタンプ(切手)ニッパーと呼ばれるレーベルデザインになる。これは、ニッパー君の部分が、四角い縁取りで囲まれ、ちょうど切手(スタンプ)のように見えるためである。これにも3つのヴァリエーションがある。ニッパー君の絵が、カラーかモノクロかの違いである。番号で見ると、ASD2470あたりから2750あたりまではカラー・ニッパー(写真6)がオリジナルで、これ以降は、モノクロのニッパーが初版ということになるらしい。(写真7)

(写真6)

(写真7)

また、ASD3800番台以降は再度カラースタンプとなるが、前者とは違い、レーベルの外周に白い縁取りがある。(写真8)。

(写真8)

そして、最終期のレーベル(ASD4000番台以降)は「新ニッパー」といわれる(写真9)デザインとなる。

(写真9)

この、ASDシリーズの半円ニッパーとスタンプ(カラー、モノクロ両方とも)ニッパーのLPは盤自体のクオリティがとても高く、ばらつきも少なく、優秀なプレス技術といえる。

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